グローバル人材育成メディア アメリカで活躍する日本人俳優に聞く「好きに正直」なことの大切さ。

アメリカで活躍する日本人俳優に聞く「好きに正直」なことの大切さ。

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対談記事 2023/09/30

こんにちは!フーリアマーケティング担当のMIRAIです。

誰もが一度は感動の涙を流したことのある「映画」や、世界共通で心を掴まれる演劇やダンスといった「舞台芸術」。

そんな特殊な文化の業界の中で、自分の好きな対象に真正面から向き合い、ひたすら前進し続けた方にお話をうかがいました。

 

A:Ohno Toru Eddy(エディ)さん(回答者)

B:水元健太(みずもとけんた)さん(インタビュアー)

 

舞台芸術の世界に飛び込むキッカケとは


B:まずは、渡米前のことを聞かせて下さい。

A:簡素な経歴なんですけれども、留学を考え始めた時、TOEICやTOEFLの点は350前後でしたから、自分一人で海外留学できる力はないと判断し、知人がやっている留学研究所に相談に行きました。「何しに行くの?」とさっそく聞かれ、とりあえず英語を学びたいという旨を伝えました。すると、「そんな考えでは3ヶ月で失敗して帰ってくるわよ」と言われてしまいました。

その時の先生には言えなかったのですが、運動が得意だったので「ハリウッド映画のスタントマンになりたい」という夢がありました。

とにかく映画業界に入って、ハリウッドの映画に出たいと考えていたのです。英語学校に行きながらパートタイムスチューデントとして、一般のレギュラースチューデントに混じり週に何回か授業を受けながら、メインは語学を勉強するという状態を1年間続けました。その後の2年間はフルタイムで舞台芸術学科を専攻して、無事卒業しました。アメリカの田舎の大学だったのですが、大学の舞台で生徒たちの催しを見た時、大きなエネルギーを感じ、心を動かされたのです。

「スタントマンじゃなくて自分も俳優になりたい!」と感じました。人の心を動かせる人になりたい!というように考えがシフトしていったのです。卒業後、ニューヨークの演技学校に通い今に至ります。

 

B:ドラマチックな経歴で、いくらでも聞けてしまいますね。

A:実は、同世代の友人たちが大学を卒業する頃まで僕自身「やりたいこと」が何もありませんでした。

皆は夢があって、語り合って、盛り上がって、それでいて十分に遊んでいたのに、就活が始まるや否やいきなり「型にはまっていく姿」を目の当たりにしました。就職のプレッシャーの中にいた自分は、「息の詰まる就活をやって、このまま息の詰まる就職先に行き着くレールには乗りたくない」という想いがあったのです。そこから留学を目指す話につながるのですが、ちょうど渡米前にアカデミー賞の受賞式を見ました。黒沢明監督の「乱」という映画でコスチュームをやってたワダエミさんという方がアカデミー賞コスチューム部門を受賞される瞬間で、「日本人が世界で成功してるんだ!」ということに感銘を受けました。

授賞式の司会者である、コメディアンであり俳優のロビン・ウィリアムスさんも好きで、彼にもいつか会いたいなぁという気持ちも芽生え、留学を決意しました。

 

渡米後に感じた、舞台芸術に対する価値観の違い


B:今では舞台芸術の世界に入り、しかもニューヨークでメインの活動をされているとお聞きしました。

A:去年までニューヨークにおり、子育ての都合でフロリダに引っ越しました。私のマネージャーはそのままニューヨークにいますので、2拠点生活というスタンスに変わりました。

 

B:フロリダは行ったことがないのですが、僕もニューヨークは4ヶ月だけ滞在しました。舞台芸術に対する価値観の違いに驚きます。

A:「いいものは素直に良い」というリアクションがストレートに返ってきますよね。

 

B:ブロードウェイで「キンキーブーツ」を見させていただいて、感動しました。自分もミュージカルが好きなんですが、「目の前で見る迫力」や「観客の雰囲気」も含めて日本で見るものとは全く違う感覚がありました。

 A:僕は逆で、アメリカで芸能の業界に入ったので、日本に帰った際には舞台を見に行ったり、自分でも舞台に立ったりして、お客さんからのリアクションが薄いことを感じます。アメリカは映画館ですら盛り上がって拍手が鳴りやまない時もありますよ。

 

「狭き門」を目指していく難しさ


B:アメリカでの、映画出演・舞台出演とご活躍されていますが、どうやってその業界に入られたのでしょうか?

 A:最初は「ノーペイ」です。経験を積むためにいろんな仕事に参加させてもらい、経験を積んで実績を増やしていきました。加えて、舞台では「ショーケース」と言って、自分を売り込むために、寸劇を披露します。様々なエージェント、マネージャー、プロダクション関係者を呼びました。

僕はショーケースで、現在のマネージャーと知り合い、一緒に仕事をすることになりました。あと、アメリカには「俳優協会」という舞台・映画のユニオンがあります。実績を積んで協会に入れば、ブロードウェイに関わる仕事ができたり、ハリウッドの映画やテレビの仕事に出演できたりします。

要するに、小さなステップで今の立ち位置まで上がっていきましたね。

 

B:ユニオンに入るまでの条件はあるのですか?

 A:その当時、テレビとか映画の場合だと、「どうしてもこの俳優を使いたい」と指名されたというステータスが必要になるか、もしくは、ある程度の長いセリフ・重要なセリフを任せられた仕事を2~3つ経験することで、ユニオン加入できます。

舞台の場合は、常勤の条件に加えて「永住権」がなかったら加入できないという厳しいものでした。1〜2週間プロダクションで仕事をいただいた際に、永住権がなくてクビになったこともありました。

やはり、手堅く仕事をやっていく、どんどん良いポジションに上がっていくには、「永住権」がいるのか…と改めて痛感しました。

 

B:「永住権」の取得は、アメリカだと条件が厳しいイメージがあるのですが。

 A:そうですね。僕の友達は、俳優として永住権を取得するのが難しいからと、「アーティストビザ」を先ず取得していました。アーティストビザは比較的簡単に手に入るので、そのステータスで仕事をこなしながら実績を得て、そこから次のステップアップで「永住権」にたどり着くという人が多かったですね。

 

B:海外の映画を見た時に、日本の方が少ないというか、日本人の役を中国や韓国の方が演じている場合が多いですよね。

 A:そうですね。だからこそ、今から俳優にチャレンジする方にはチャンスだと思うんですよね。留学やワーホリの支援ツールをもっと活用していけば、昔と比較して海外は身近な存在になっていきます。本当に今の若い方はチャンスがあります。

 

困難を乗り越える力の源は「好きの気持ち」


B:過去を振り返っていただいて、「これがあったから自分はうまくいった」と思うことはありますか?

 A:あの時の自分は20代前半でしたが、なにより「若い思考」が重要だったと思います。

チャレンジ精神もあるし、やりたいことやりたいと思ったらまっすぐ突き進む。それは今も変わりませんが、人生経験が増した分、失敗の確率を計算するじゃないですか。

しかし、当時は周りにいろんなことを言われながらでも、「自分これやりたいから!好きだから!」と没頭できる集中力とかエネルギーだけがありました。僕に何があったんだって聞かれたら多分それだけです。

 

B:カッコイイです。迷いがないってことですよね。

A:迷いはなかったです。もちろん、沢山失敗して先が見えてくるようになりました。挫折しても自分が決めたことをやるのが好きだったんですよね。恐れやプライドよりも、「好きの気持ち」の方が勝っていたので、何回壁にぶつかっても続けられました。

 

B:すごいですね。その中で出会った今のマネージャーさんは現地のアメリカ人の方ですか?

 A:彼女はエチオピアとアジア系のハーフで、長い間ニューヨークでダンサーとして活躍している方です。当時、今よりもっとマイノリティ民族に対して風当たり厳しかった中で生き抜いてきた人なので、僕みたいなアジア人たちを引っ張り上げて、光の当たる場所に送り出すのが彼女の使命というような感覚があったようです。昔も今も変わらず可愛がってもらっています。

 

B:出会いをつないでいって、今があるのですね。奥様はどちらのご出身の方ですか?

A:彼女は日本人です。ニューヨークで知り合ったのですが、彼女はダンス留学に来ているところでした。彼女も渡米したばかりで英語ができない時に、偶然にも日本語の舞台があって、そこで知り合って仲良くなりました。

 

B:すごいですね。そのままお二人とも日本人なのにアメリカに残って活躍しているという。

 A:多分アメリカが好きなんです。何かいい仕事をした時にそのままレスポンスがある。一般的な人間同士の付き合いでも裏と表がなくて、良くも悪くも、「素直」「単純」な人が多いです。みんな前向きだし、もちろん悩みもあるけれども、コミュニティの雰囲気がナイスでした。

日本にいると知らない間に息が詰まっていましたが、アメリカに来た時に日頃感じていた窮屈さがバーン!!とはじけ飛びました。お互いに意見を言いながら、食い違いながらでも、最後にはお互いをリスペクトできるのがアメリカに住む方の気質だと思います。

加えて、年齢やジェンダーに関しても良い意味で気にしないから、人間対人間で付き合えるのが、日本と比べた時のアメリカの魅力ですね。

 

アメリカで感じた「ナイスな人々」の魅力


B:アメリカの方々の魅力は、敬意はもちろん持つんだけれども、媚びない。特にニューヨークはいろんな人種の方がいるから、ナイスな雰囲気が浸透しているのでしょうね。大学もニューヨークだったのでしょうか?

 A:大学はバージニアというアメリカ南部の州です。最初の先生にどこ行きたいのか聞かれた際に、ニューヨークのきらびやかな街もいいし、カルフォルニアの海もいいなぁと、お気楽な返答をしたのです。

その先生に、「日本人がいないところに行きなさい。遊ぶところが何もない、勉強しかすることのない田舎が良いのよ」って言われてバージニア州へ行きました。やはり厳しく言ってもらったからこそ無事に卒業でき、その後、大好きなニューヨークに移ることができました。

 

B:初めて行ったニューヨーク、いかがでしたか?

 A:初めて行った時は、空気のエネルギーの濃さ、街全体のテンションの高さに興奮しました。

一方で、最初行った場所は汚くて危ないところだったので、死と隣り合わせの雰囲気とのギャップも感じました。街を歩いていると危なそうな人から、かっこいい人から、汚い人までいろんな人がいて、街のエネルギーに圧倒されましたね。

そんな中、今の留学生で一番元気がないのは日本人の留学生だと思っています。学生映画を頼まれて学生と一緒に仕事をする機会がありますが、僕が学生だった頃は日本人で「映画を作りたい」と息巻いている方が大勢留学してきていました。今では日本人の学生もほとんどいません。

バブル後の失われた20年とまでは言いませんが、やはり、みんな元気がなくなってきているのでしょうか。日本人はみんな頭がいいし、きっちりしてるし、本当に語学ができれば、世界で絶対に成功する可能性があるナンバーワンの人種だと思うんですよ。

 

B:僕もその意見に共感します。あとは、グローバルな環境にどうやって飛び込むか。ここを全力で後押ししてあげたいです。

A:余談ですが、僕が最初に留学を斡旋してもらった場所で出会ったピアニストとダンサーがいました。二人とも僕と同じように英語ができない状態からのスタートでしたが、今それぞれの道で成功しているのです。

やはり「自分の好きなことに真剣に向き合っている人」はどんな業界でも残ってるんだなと感じました。そういった感覚を次世代の方にも沢山教えてあげたいですよね。

 

さいごに

B:インタビューを通してエネルギーをもらい、自分自身も夢が広がる感覚がありました。色んな業種の方が海外でご活躍されていますが、やはり「好きなこと」を追求しているエネルギッシュな方が多いです。

皆様も、海外で向上心のある方に触れ、自分の「好きなこと」を貫くパワーをもらってみてはいかがでしょうか?

 

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執筆者

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